プチ・ヴィンテージウォッチハンターズ vol.1

リアルプライスだけど大満足。

“良い時計”は往々にして高価である。新作時計は為替の関係もあって年々価格が上昇しているため、手ごろなヴィンテージウォッチを狙うというのも正しい考え方だ。では時計初心者でも安心して使える上に、こなれた価格の良品時計はどこにあるのか? この企画は時計ライターの篠田哲生と、時計初心者であるSENSE編集部新人篠原聡志が、実際に時計店を訪れ良作を探すガチンコ“ショッピング”ドキュメンタリーである。

第1回「30万円台でロレックスは買えるのか?」

篠原 いつも本誌の時計連載ではお世話になっております!本誌では篠田さんならではの切り口、趣向を凝らした企画で新作をご提案いただいていますが、正直時計初心者の僕には高額なものが多くて……でも社会人になったからには身だしなみを整える意味でも、そろそろ時計が欲しいな、と思っているんです。

篠田 そもそも篠原君はどんな時計が好みなの?

篠原 恥かしながら自分の好みもよくわからないと言うか、「ロレックス」くらいしかピンと来ません。といってもロレックスがどいういうブランドなのかもわかっていませんが(笑)。もちろん高いんです…よね?

篠田 現行モデルだと50万円以上。人気モデルなら100万円近いよね。

篠原 そうですよねー……

篠田 でもアンティークウォッチであれば、こなれた値段のモデルもあるからご安心を。一般的にはアンティークロレックス=超高額というイメージがあるけど、それは「デイトナ」や「サブマリーナ」の中でも極一部の希少モデルだけ。いわゆる“普通のロレックス”は、販売本数が多いということもあって意外と価格がこなれていて、それこそ30万円台でも十分に良作がある。

篠原 ホントですか!? それなら何とかなります! でも“アンティーク時計店”って、すごく敷居が高い印象ですけど、僕のような初心者が行っても大丈夫ですか?

篠田 そうかと思って、今回選んだのは渋谷の「アイテム」さん。この辺りは有名セレクトショップが集まっている見慣れたエリアだから安心でしょ?

篠原 そうですね、この道は数えきれないほど通ったのに、まさかここに時計店があるとは知りませんでした。

篠田 では早速入ってみましょう。

篠原 おぉ〜いきなりロレックスだけでもたくさんありますね!

ショーケースの中にはたくさんのロレックスが。モデル名だけでなく、生産年数も明記されているので、時計選びの参考になる。

加藤 店長の加藤です。今日はどういう時計をお探しですか?

篠原 えっと、あの~、○△□×△※……

篠田 いきなりパニックじゃん(笑)。 今回は予算30万円台でロレックスを探しているんですが、おすすめはありますか? 篠原君、アンティーク時計店のスタッフはみんな時計のプロだから、まずは希望を明確に伝えるのが大切なんだ。新品時計と違って個体によって価格の差があるけど、そこにもちゃんと理由があるので、まずはしっかりと説明を聞くことが大切だね。

加藤 そうですね、30万円台のロレックスとなると、カレンダーが瞬間的に切り替わる1960年代製「デイトジャスト」がお薦めですね。ベゼルの形状が違うので、キラキラ輝いてドレッシーに見えるタイプも、シックに見るものもありますよ。さらには針の形状によっても雰囲気も変わります。

会話をしながら時計をトレイに出してもらう。アンティークロレックスといっても多彩なモデルがあるので、相当悩むことになるだろう。

篠田 フムフム、かなり選択肢がありますね。惹かれるのはこのシルバーダイヤルのモデルかな。このベゼルのきらめきが綺麗ですね! 70年近く前の時計とは思えないオーラがあるし、これだけでもロレックスをつけているという事が分かる。

1960年製のロレックス「デイトジャスト」。キラキラ輝くフルーテッドベゼルを採用しており、ドレッシーな雰囲気に。\328,000

篠原 ところで他と比べてダーク系の色のモデルの方が高価なのはなぜですか? 

加藤 60年代ごろはロレックスに限らず、時計業界全般でカラーダイヤルが少ないんです。その希少性によって世界中で人気が上がり、高価になるのです。

篠原 なるほどなるほど。

篠原 希少という言葉を聞くと、俄然ブラックダイヤルが気になってきますね(笑)。僕は超初心者なんですけど、こういうアンティークウォッチを買ってもいいものでしょうか?

加藤 もちろん問題ありませんが、知っておくべきことはあります。アンティークウォッチと現行品との大きな違いは“防水性”。機械式時計にとって水は大敵ですから、モデルによっては、雨はおろか汗さえも気をつけないといけない場合もあります。しかしロレックスの代名詞であるオイスターケースはとても堅牢で、リューズもねじ込み式なので、他社よりは扱いやすいでしょうね。古いモノですから絶対とは言い切れませんが、少なくとも“防水を期待できる”レベルにあります。

1972年製のロレックス「デイトジャスト」。希少なグレーダイヤルモデルで、6時位置にはいる“CHRONOMETER”とは高精度の証。\398,000

篠田 とても堅牢な時計だからこそ、50年以上前に作られた時計なのに、コンディションの良い個体が残っているともいえる。そこがロレックスの凄さですよね。おっと、こっちには「エアキング」もありますね。

加藤 「エアキング」も少しずつ人気が高まっていますね。かつてはカレンダーを持たない廉価版として誕生しましたが、そのスマートなルックスが、今や人気のポイントになっています。

1969年製のロレックス「オイスターパーペチュアル エアキング プレシジョン」。ノンデイトのためドーム型風防の優美さが際立つ。\308,000

篠原 そういう通っぽい雰囲気もいいですね。知らなかったことばかりで興奮してます! しかも自分には縁遠い世界のモノだと思っていたロレックスが、ボーナスで買えるかもなんて驚きです。 篠田 ちょっと試着してみたら? 時計は身に着けて使うものだし、見た目だけでなく、着用感とかサイズのバランスも大切だからね。

恐々と時計に触れるSENSE編集部篠原を、親鳥の気分で見守る篠田。しかし内心では「落とすなよ」とびくついている。

篠原 時計に触れることすらも初めてだから、どうやってブレスレットのバックルを外すかもわからない……。

加藤 ここをもって、こう力を入れると外れますよ。おっ、いいじゃないですか?

篠原 うわー、凄く…カッコ…いいです!

これまで腕時計をつけたことがないという篠原にとって、記念すべき“時計童貞卒業”の瞬間。この笑顔を見れば、その喜びが分かるだろう。

篠田 言葉を失ってるね(笑)。じゃあ僕も試着しようかな。篠原君は指輪もブレスレットもつけていないから問題ないけど、僕は指輪を外してっと。こうしないと大切な商品を傷つけてしまう恐れがあるからね。

篠原 そういった作法も、大人の嗜みとしてもっと知りたいです。

加藤 複数の時計を持つと時計同士がぶつかってしまうので、扱う時計は一本ずつが鉄則。とかですかね。

篠田 高価で繊細な機械を扱っているという意識を忘れちゃだめだね。

篠原 緊張しますね。しかし、こんなにたくさんのロレックスを見せてもらえるとは思わなかったので、ついつい目移りしちゃうなー。

篠田 まあ、いきなり購入しちゃうと企画が終わっちゃうから、まず冷静になろう(笑)。お店には他のブランドやクロノグラフもあるしさ。

篠原 えっ? クロノグラフって何ですか? 〈次回へ続く〉

Shop Information
アイテム リペア工房も備えるアンティーク時計店。購入後6か月間であれば、針外れや極端な時計の誤差などに対しては無償修理の保証付き。 東京都渋谷区神南1-15-11 営業時間:12:00-19:30 定休日:水曜日(祝日は営業)

篠田哲生:時計ライター 篠田哲生:時計ライター
1975年千葉県出身。講談社「ホット ドッグ・プレス」をへてフリーに。時計専門誌、ビジネス誌、WEBなど様々な媒体で時計記事を担当。時計学校を修了した実践派である。

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