VibratioNote Searching for Ultimated Vintage Worlds!

Text & Editorial Photography by Rin Tanaka
Courtesy of Bob Chatt, David Karlak,
Madeline McInnis, Hajime Narahara

vol. 32
A面で恋をして、B面で……何をしよう!? (後編)

世界中の音楽ファンがコロナ自粛中に得た収穫は、「久しぶりに良く音楽を聴いた」ことです。僕も毎日レコードを触っています! 今月はジャケットまで素晴らしい「クールなジャズ・レコード」特集です!

今月も、マデライン・マッキニス(20)さんと撮影です。僕がイベント用に購入したDJセットの前に立ってもらいました。僕自身はDJをやらないのですが、年に一度のイベントの際は自分でセットアップし、テストをやるのが楽しみ。大きい会場なので、自宅とは桁違いの大音量でレコードをかけることができます。やはり音楽は「音が大きい!」とより感動します。

DJ Set

DJ用ターンテーブルの「歴史的大ヒット! 」といえば、1990年代に〈テクニックス〉が世界中で発売した「SL-1200」シリーズです。「あ、俺も持っていた!」という人は当時の「DJブーム」を体験した世代でしょう。この「SL-1200」が未だに人気があるのは、シンプルで壊れず、とても使いやすいからです。しかも修理も可能。その割にまだプレミアム価格が付いておらず、お手頃で良質なレコード・プレーヤーを探している人にはオススメです。ちなみにコンソール(=プリ・アンプ)は〈Vestax〉の「PMC-05」(これまた当時の定番モデル!)を使ってましたが、ノイズが多くなり、現在は〈RANE〉の「TTM 56S」をセットアップしています。これまた実に使いやすい。

「 レコードで癒された~い」若者が
増えていることは、数少ない朗報だ。

「ジャズ・レコード、売ります!」│もう6年前になりますが、自宅から車で30分ほど走ったカリフォルニア州フラートン市のガレージ・セールで買った「ジャズ・レコード」は、思い出に残る体験となりました。なんと80歳くらいのおじいさんが家のガレージにテーブルを並べ、臨時レコード・ショップをオープンしたんです!しかもジャズ・レコードのみで、300枚以上。アメリカにもジャズ・ファンは沢山いますが、CD派が大半なので、今や古いレコードは滅多に放出されません。それだけにネット上で「ジャズ・レコード、売ります!」という文字を見た時は、かなりドキッとしました。
 レコードをめくりながら驚いたのは、セレクトが抜群なことです。95点! しかも僕のコレクションとあまりダブっておらず、「同じジャズ好きでも、聴く角度が違うんだなぁ」と感心しましたよ。
 テーブルの上に並んだダンボールは全部で7箱。 「$30」、「$25」、「$20」……と$5単位でランク分けされていました。悔しいのは、僕が欲しいのは$25〜30の箱から選んだものばかり! そもそもガレージ・セールというのは、「持ってけ泥棒!」みたいな格安プライスで販売するのがアメリカの常識で、これだったら普通の中古レコードと変わりません。このおじいさんはかなり手強いですよ。それでも良いご縁と思って$300分も購入。もちろんおじいさんは凄くご機嫌でした。
 2週間後にそのおじいさんからメールが来ました。「前回売らなかったモノを売るから、また来ないか?」。もちろん行きますよ!再び現金を握りしめ、フラートンへ向かいました。何と前回よりも欲しいレコードが増えており、また$300も買ってしまいました。
 さらに2週間後。「今回が最後だ」とメールがあり、またドライブです。そして欲しいレコードが結構ありました。どうも、一番好きなレコードを最後まで残していたようですね。僕はその戦術にハマり、短期間で10万円近くレコードを買ってしまいました! こんな「大人買い」は初めてです。
 それでも、おじいさんはいつも僕がレコードを持ち帰る姿を見ながら、寂しそうな表情を浮かべていました。それはそうでしょう。50年以上大切にしてきたモノが突如消えてしまったのですから。
 どうしても捨てられないモノは?│もしそう聞かれたら、僕の場合は小学生の頃から集めている「レコード」です。小遣いを貯めては1枚、1枚……と買い続け、徐々に本棚がレコードの重さに耐えきれなくなっていきました。
 人生で一番レコードを買ったのは、浪人時代と大学生だった5年間、1990年前後です。当時は音楽業界が完全にCDへとシフトし、日本でもアメリカでもレコードが大放出されていました。そこで僕はアルバイト代が入るたびに、レコードをガンガンと購入し続けました。しかし社会人になるとレコードを聴く時間が全くなくなり、さらに大きな引越しを何度も経験。それでもレコードだけは実家に保管してもらい、アメリカへ移住する際は一緒に太平洋を渡りました。そして15年前に再びオーディオを購入し、中古レコード屋にも立ち寄るようになりました。
 それでもフラートンで爆買いして以来、あまりレコードを買わなくなりましたね。レコード・ラックにはLPが600枚以上あり、ガレージで眠っているCDが1000枚以上。コレクターとしては少ない方だと思いますが、僕はこれくらいで充分。51歳にもなると、「残りの人生でどれくらいレコードを聞けるのか?」とたまに心配になるんです。そしていつの日かあのおじいさんと同じように、ガレージ・セールでレコードを売る日がやって来るのでしょうか……。
 1990年代にレコードがほぼ消えた時代を知っている世代としては、ここ10年でレコードの売り上げが伸びている珍現象に驚きを隠せません。誰もが「レコードは死んだ」と確信していましたから。それでも、良いモノや文化は世代を超えて生き残るんですね。そう考えると世の中のトレンドなど無視し、黙々と好きなことを研究を続けるひたむきさが重要です。
さぁ、今日もレコードをたっぷり聴きましょう!  (次号に続く)

Jazz

今月は僕が「何十年聴いても全く飽きないレコード」を紹介しましょう。ただしあまりに多すぎて、「ジャズ」のみに限定。レイアウト上に並べてみると……昔のジャズ・レコードはジャケット・デザインまで異常なセンスを感じますね。フォントや色遣いが斬新です。ジャズは1930 年代〜1960年代にかけてニューヨークで開花した音楽で、それは同市で「ミッドセンチュリー・デザイン」が全盛だった時代と重なります。ジャズ・レコードを担当していたデザイナーたちも、当時のモダン建築・家具業界のトレンドに影響を受けていたのでしょう。レコードがインテリアにも成り得ることは、ジャズ・レコードの実に素晴らしい点です。

レコード再生は思いのほかセットアップが難しく、そこでテストの際に必ず聴く「試聴用の1枚」を選ぶことをお薦めします。僕はサニー・ロリンズの『Saxophone Colossus』(1956年録音)をチョイス。このアルバムは演奏の素晴らしさに加え、1950年代にしてレコーディングの技術が物凄く高いからです。今聴いても、まるでロリンズが目の前でプレイしているような気分にさせてくれるます。僕はこのアルバムが良い感じで鳴っていれば、「オーディオもOK」とひと安心。ただ、低音や高音が上手く鳴っていない場合は原因を探リ続けます。その繰り返しがオーディオ人生でして、「終わりのない終着点」とはよく言ったものです。

Horns

ジャズの中で人気が高いのは、トランペットとサックスが交錯する「ホーン・サウンド」でしょう。チャーリー・パーカー、マイルス・デイビス、ジョン・コルトレーン……と凄いプレーヤーが膨大におり、ホーン系を追っているだけでもジャズの世界は全く終わりが見えません。管楽器は誰と誰が組むかで音楽の方向性が随分と変わってきます。ジャズが全盛期だった1960年前後は「夢の共演」が頻繁に起きており、ジャケットに記載されたメンバーを確認することは「ジャズ鑑賞」の大きな楽しみです。

Piano

ジャズの世界で管楽器と人気を二分し、傑作が多いのが「ピアノ・サウンド」です。ジャズ・ピアノ奏者の大きな特徴は、幼少の頃にクラッシック音楽を勉強し、高校・大学あたりでジャズに転向しているはずです。そのためクラッシック寄りの綺麗な旋律を弾く白人系ピアニストと、鍵盤をパーカッシブに叩く黒人系ピアニストの2タイプが混在。どちらも個性的で素晴らしく、2つのスタイルを交互に聞いているとジャズ・ピアノの面白さがさらに広がってきます。

Vocal

ジャズの世界には昔から「ディーバ(歌姫)」と呼ばれる、「無茶苦茶、歌がうまい!」女性シンガーが多く登場してきました。そのため、「女性ジャズ・ヴォーカルが特に大好き!」というオーディオ・ファンは世界中に存在します。注目したいのはバックの演奏で、上手い歌手には必ず一流のプレーヤーがバックを固めています。「ジャズはよく知らない」という方は、女性ジャズ・ボーカルから聴き始めると抵抗感なく自然とハマるかもしれません。

Jazz Guitar

僕はギターが趣味でして(下手ですが……)、ジャズ・ギター系のレコードを良く買います。自己流が多いロック・ギターとの大きな違いは、ジャズ・ギターリストは若い頃に先生から教わったケースが大半で、その先生にも大昔に師匠がおり、何代にも渡ってジャズ理論やテクニックが受け継がれてきたことです。これは将棋の世界と良く似ており、みんなが同じ「基礎」を学び、似たようなギターを使うので、他人との違いを生み出しずらいんです。それでも過去に様々な個性的アプローチがあって、「そう来たか」と考えながらレコードを聴いていると、ギターが好きで本当に良かったなぁと思います。

写真を見て、「レコード・クリーナー」と分かった人は結構なマニアです。僕の記憶では、1986年頃から大手レコード会社が「CDの時代」へ移行しており、中古市場に溢れるレコードの大半は1970年代〜1980年代に販売されたものばかり。流石に40〜50年も経つと結構埃が溜まっており、それを清浄するのがこのマシンです。ただし結構値段が高く(新品で15万円以上!)、主に中古レコード屋が購入する「業務用」となっています。それでもこのクリーナーを使ってレコードを洗うと、シャンプー後のような爽快感! レコードはまだこの先何十年も活躍できるので「不滅のオールド・メディア」なので、沢山所有している人には特にお薦めです。

レコードが好きで「とんでもなく大きなモノを買ってしまった!」のが、マデラインさんが座っている業務用レコードラックです。10年前に地元のレコード屋が閉店し、最後は自家製ラックまで大放出していたので1つ購入。このラックに収まったレコードをめくっていると、中古レコード屋にいるような気分になれるのが最高です。