VibratioNote Searching for Ultimated Vintage Worlds!

Text & Editorial Photography by Rin Tanaka
Courtesy of Bob Chatt, Michael Manpearl, Shohei Ohtani

6月に入って、メジャーリーグは遂に「観客制限なし」に! 野球場に沢山のファンが戻り、いつになく盛り上がっています。今月は日米ともに優勝争い真っ只中の「野球特集」です。

vol. 33
Baseball is Back!

メージャー4年目にして遂に大ブレイク中の、〈エンジェルス〉大谷翔平選手! しかも今シーズンから「2番・ピッチャー」という本物の二刀流が解禁となり、「あの日本人は化け物だ!」とアメリカでも話題になっています。特に大谷選手が「投手」としてマウンドに登る日は、1週間で最も楽しみなゲーム! メジャーでは珍しい「スプリット」(=落ちる球)を決め球に持っており、ストレートが走っている日の大谷投手は最強・無敵です!( 撮影:2021年6月23日)

今月はロサンジェルス郊外、アナハイム市にある「エンジェル・スタジアム」からリポート。かつてはあの〈ディズニー〉がオーナーだった時期もあり、ご近所の「ディズニーランド」を野球場したようなアットホームな雰囲気が「実に〈エンジェルス〉らしい」ですね。ファンも穏やかな人が大半で、ビールを飲みながらスタンドを見渡していると妙に落ち着きます。Let’s Go Angels!

ヤンちゃな選手がいないと、野球は面白くない。

 乱闘が始まった!│野球を観ていて一番エキサイトする瞬間は、ホームラン、そして……稀に起きる「乱闘騒ぎ」です! 野球の試合は4時間前後あるので、どうしても途中で集中力が切れます。そんな時にまさかの乱闘が起きれば、誰だって目が覚めますよ!しかし、僕が応援する地元球団〈アナハイム・エンジェルス〉(というチーム名が一番しっくりくる)で乱闘があったのは随分昔のことで、ここ数年は見たことがありません。
 その理由は、〈エンジェルス〉は「アメリカで一番豊かな郊外」と言われるオレンジ・カウンティーをベースにする球団で、選手&ファンともに「上品でアットホームな野球」が売りなんです。もしピリピリしたゲームが観たければ、ご近所の〈ドジャーズ〉か〈パドレス〉がお薦めです。「昔のベースボール」がまだ残っています。
 乱闘の歴史を探ると、圧倒的に昔の方が多かった気がします。僕が野球少年だった1970年代を振り返っても、プロ・アマ問わず、野球監督・選手に「怖〜い人」が沢山いました。昔は「稼げるスポーツ」と言えば野球とボクシングくらいしかなかく、全国から血の気の高い個性的なプレーヤーが集まってきたのです。そして不良プレーヤーの存在こそが、野球をさらに面白くしてくれました。
 アメリカで初めてプロ野球チームが結成されたのは1986年頃、つまり150年以上も昔のことです。しかし最初の約50年は立派なスタジアムがあった訳でもなく、選手の年棒はかなり安かったはずです。そんな訳の分からない商売に飛び込んでくる若者は多くが裕福ではない家庭に育ち、しかしガタイだけは良いガキ大将タイプばかりでした。中でも有名なのが、「野球の神様」ベイ・ブルースです。昔は特に不良少年が野球をやると、成功する確率が高かったのです。
 それ以上の問題は、スポーツ興行ゆえか、どうしてもうさん臭い人や「黒い影」が寄ってくることです。実際に1989年、メジャー最多安打記録を保持するピート・ローズは「野球賭博事件」で永久追放されました。実は30年前まで野球賭博が実在していたのです。
 それでも荒くれ集団のMLBが「アメリカの国民的スポーツ」にまでなった背景には、昔から今日まで子供たちを大切して、チャリティーを積極的にやってきたことが大きかったと思います。特に昔は野球のそばにたくさんの「貧困」が存在し、労働者階級の子供たちにとってプロ野球選手は今以上に「憧れの存在」でした。そしてアメリカ中でリトル・リーグが創設されるにつれて、野球が大ブームになったのです。
 プロ野球が大きく変わりだしたのは、日米ともに1990年代以降だと思います。球団と選手の労使関係がより改善され、平均年棒も跳ね上がり、子供の頃からレベルの高い野球教育を受けないととてもプロで通用する選手になれなくなったのです。その結果、上品で真面目な選手が随分と増えました。
 それでも「やんちゃだけど、野球のセンスが抜群にある」天才プレーヤーがいつの時代にも登場するのは、メジャーリーグにとって「不可欠な存在」だからでしょう。例えば、2000年代以降は中南米出身のプレイヤーが異常に増え、「ナメられてたまるか!」とばかりに、腕がタトゥーだからけのプレーヤーが沢山います。そして彼らの多くが、故郷の家族を「貧困」から救うために必死で野球をやっています。そういうハングリーな野球は今なお、「労働者のためのスポーツ・ゲーム」としてスタートしたベースボールの原動力です。
 乱闘や一発触発が多いチームの特徴は、「勢いに乗って、異常に強い」ことではないでしょうか。弱いチームがグラウンドで暴れても説得力がないですからね。そう考えると、近年Bクラスを彷徨っている〈エンジェルス〉は、ちょっと元気が足りないかもしれません。
 それでもファンとしては、「〈エンジェルス〉らしい野球をやって負けるなら、まぁしょうがないかなぁ……」と。もちろん、いずれはペナントレースに食い込んでピリピリしたゲームをやって欲しいのですが、まだ時間が掛かりそうです……。取り敢えず今日も、Let's Go Angels! (次号に続く)

Old Baseball Fashions

3色プリントが当時として画期的なこのスエットは、1960年代初期〜中期に発売された「育成リーグ用」の記念品です。一番下に〈ボストン・レッドソック〉で大活躍した「20世紀最後の三冠王」、カール・ヤストレムスキーがいますね。彼の孫であるマイク・ヤストレムスキーが近年〈サンフランシスコ・ジャイアンツ〉の人気選手として活躍しており、今やメジャーでも「3世代の野球ファミリー」が珍しくありません。歴史の重みを感じる、実にクールなヴィンテージ・スエットですね。(撮影協力: Bob Chatt)

クリーブランド・インディアンズ〉の選手かスタッフが1950年代に着ていた「ベース・ボール・ジャケット」。「サイズが大きくて、撮影が大変!」なのがプロ野球用ユニフォームの特徴で、昔からアメリカの野球選手は「大きい!」人ばかりだったことが分かります。ボディはシカゴの〈ウィルソン〉製。同社は今なおメジャーリーグの有名ブランドとして健在で、〈ウィルソン〉の歴史を調べると米野球ユニフォームの細かい歴史がもっと見えてくるかもしれません。(撮影協力: Bob Chatt)

1950年代の「育成リーグ」用キャップ。戦前までの野球帽は「ニューヨーク・スタイル」、「ボストン・スタイル」といった、チームごとに異なったデザインを採用。しかしこのキャップが作られた1950年代以降は徐々に「統一デザイン」へと変化します。そして野球帽を被った子供が増えたのも、「野球ブーム」が巻き起こった第二次世界大戦後以降の大きなトレンドでした。今日のストリート・シーンでも野球帽はとてもアメリカらしさを表現するアイテムで、それはヨーロッパ・ファッションとの大きな違いのように感じます。(撮影協力: Michael Manpearl)

〈シカゴ・カブス〉の選手かスタッフが1960年代に着ていた「ベース・ボール・ジャケット」。素材は1950年代のウール製から防水性のある「レーヨン製」に進化しており、雨が多い米中西部の気候に適しています。シカゴはとにかく寒いエリアなので、昔から〈カブス〉は球団・ファンともに「着るものに気を遣ってきた」印象があります。実際に、ベースボール系ヴィンテージ・ウエアを探していると、なぜか〈カブス〉によく出くわすのは決して偶然ではないでしょう。(撮影協力: Bob Chatt)

1961年に歴史的なホームラン王争いを繰り広げたミッキー・マントルとロジャー・マリス(ともに〈ヤンキース〉)。この子供用Tシャツはまさにその1960年代初期に発売されたヴィンテージ品で、メジャーリーガーをフューチャーした「最初期のオフィシャルTシャツ」のようです。ただし当時は「子供用」のみで、大人用が発売されたのは1970年代後半以降となります。(撮影協力: Bob Chatt)

MLBファンなら一度は行ってみたいのが、ミズリー州セント・ルイスです。〈セントルイス・カージナルス〉は昔から「熱い野球をやっている」ことで有名で、その理由をもっと体感したいですね。やはり子供用Tシャツで、1970年代製。(撮影協力: Bob Chatt)

トラが生息しないアメリカで1930代以降に「超人気キャラ」となったのが、「タイガース」です。特にヴィンテージの世界では「虎」がよく登場しますね。この〈デトロイト・タイガース〉の子供用Tシャツは1960年代製。(撮影協力: Bob Chatt)

名門チームとして有名な〈アスレチックス〉がまだカンサス・シティーに本拠地を置いていた1960年代初頭の子供用Tシャツ。同チームは昔からサーカスをイメージするゾウがトレードマークで、ロケットに乗ったアトミック・デザインが可愛いですね。(撮影協力: Bob Chatt)

最後は、〈ミルウォーキー・ブリューワーズ〉の1970年代製子供用Tシャツ。背中に入った名前と背番号はカスタム・オーダーのようで、1970年代以降は背中にもプリントが入ったベースボールTシャツが急増しています。(撮影協力: Bob Chatt)

今年の大谷選手は、特にバッティングが冴え渡っています! この原稿を書いている7月15日現在、ホームラン王争いでなんと両リーグのトップ! ピッチャーの立場からすると、「どこに投げても打たれる」というくらい、今年の大谷選手は絶好調です。そして左バッターとしては、「今メジャーで最も美しいスイングをするスラッガー」ではないでしょうか。ちなみにキャッチーは、〈サンフランシスコ・ジャイアンツ〉の人気者、バスター・ポージーです。