ビジネス論、大開陳! 鳩山会談 和島昭裕さん

edit & text by KAIJIRO MASUDA
illustration by CHINO A

今回のゲストは、デザイナーからマーケティング、メディア、社長業とファッション業界で多彩なキャリアを積んできた和島昭裕さん。強面だけど優しい“WAZZYさん”として、業界で頼られる存在です。今春にはアカツキの元取締役の小川智也さんと新会社、KREATION(クリアーション)を設立し、ゲームとサイバーファッションのグローバルプラットフォームの構築に取り組んでいます。3年前からNFTに注目してきた鳩山さんとの会談は、ファッションとNFTの未来を照らす示唆に富んだものとなりました。必読です!

第三十回

GUEST
和島昭裕さん

1974年生まれ。アメリカ・アリゾナ州立大学建築学部卒業後、ニューヨークでファッションブランドのアシスタントデザイナーを経験。広告代理店、サザビーリーグ、楽天を経て、2014年にファーフェッチジャパンの立ち上げに参画。2019年にハイプビーストジャパン代表取締役社長/マネージングディレクターに就任。2 0 2 1年3月にKreation Inc.を設立し、代表取締役COOに就任。

鳩山:はじめまして。和島さんはファッション業界で様々なキャリアを積んできたとお聞きしています。

和島:大学はアリゾナ州立大学の建築学部で意匠設計を学びました。ファッションは子供の頃から大好きで、大学の時に川久保さんとヨウジさんの“黒”に衝撃を受けたんです。建築と似ていると思って、それから自分で服を作るようになりました。で、大多数の卒業制作は都市開発なんですが、僕はキャンパスでファッションショーをやったんです。

鳩山:建築学部なのに!

和島:学長に怒られると思ったら、逆に褒められました。それでファッションの道に進もうと思って、ニューヨークのオートクチュールブランドに拾ってもらい、2年間アシスタントデザイナーを務めました。

鳩山:最初はクリエイティブからスタートしたんですね!

和島:ええ。昼間は会社で働いて、夜はパーソンズ美術大学に通っていました。ファッションで世界を変えるという野望を持った仲間が世界中から集まっていて、刺激的な毎日でしたね。でも業界は冬の時代。アメリカ同時多発テロの影響で、周囲のブランドは軒並みクローズしました。その時に感じたのは、ファッションは平和のベースの上に成り立っている産業だということ。ファッションを守っていくことが人間が人間らしい生活を送る基盤になるという思いを強くし、この業界で生きていく決心が固まりました。

鳩山:なるほど。

和島:帰国して広告代理店、サザビーリーグ、楽天でファッションに携わった後、ファーフェッチジャパンの立ち上げに参画しました。創業者のジョゼ・ネヴェスは、10年後のマーケットをビビッドに捉えていて、確固たるビジョンがありました。ジョゼとビジネスを共にした経験は自分の血肉となっていて、グローバルスケールでビジネスを考え、将来のビジョンを周囲に伝えていくことの大切さを学びました。

鳩山:次はメディアですね。

和島:ハイプビーストが各国にブランチを作る面白いタイミングだったので、挑戦してみることにしました。社長業もメディアの仕事も初めてでしたが、ブランドとコンテンツを作って、それをカルチャーでドライブしていくダイナミズムを感じられたのは良い経験でしたね。

鳩山:新会社のクリアーションの事業内容について詳しく説明していただけますか?

和島:ブランドとクリエーターと消費者をつなぐ、ゲームとサイバーファッションのグローバルプラットフォームを構築するのが弊社のミッションです。まずは9月28日にローンチするマーケットで、ゲーミングアバターやデジタルアバターをNFT(1)で販売します。

鳩山:日本だとゲームとファッション業界はコンシューマーが重ならないイメージがあります。

和島:確かに僕らの世代では乖離していますが、10〜20代の世代のファッション消費は明らかに変わってきています。中学2年生の息子は、フォートナイトとエーペックスレジェンズ(2)に夢中で、新しいスキンを買いたいって言うんです。自分のアバターをカッコ良くしたいから、月々のお小遣いをブイバックス(フォートナイト内で使う仮想通貨)で欲しいと(笑)。

鳩山:うちも同じです(笑)

和島:で、前にフォートナイトでジョーダンを買ってあげたら、自分も着たいと言い出して……。最初にメタバース(3)で所有してそこからリアルに所有する流れは、革新的で面白い消費です。若い世代ではファッションの入り口がゲームになってきているんです。

鳩山:なるほど。ゲームとファッションを結び付けようと思ったキッカケを教えてください。

和島:SF映画「レディ・プレイヤー1」を見て、現実世界からメタバースに行って活躍するシナリオが凄くファッションっぽいと思って、メタバースで消費されるファッションに興味を持ちました。今はゲームがソーシャルメディア化している時代。フォートナイトもフェイスブックを競合として見始めているし、今後はゲームとそれ以外のソーシャルメディアに二分化されていくと感じています。で、ゲームのソーシャルメディアで、現実のソーシャルメディアと同様にファッションが求められるようになるのではないかと。

鳩山:なぜゲームの中でそれが起こり始めているのでしょうか?

和島:理由は2つあって、まずは“数の論理”があります。フォートナイトのプレーヤーは全世界に3億5000万人いて、かたやバスケットボールのプレーヤーは7000万人。もはやメジャースポーツの人口をも超えているわけです。フォートナイトのようなメタバースに行った時、自分と他者を区別したくなるわけで、そのツールがファッションだと思うんです。もうひとつは、メタバース体験が現実体験に近づいてきていること。トラヴィス・スコットのフォートナイトでのライブを息子と同時接続で見たんですが、現実のライブに近い感覚がありました。

鳩山:自分も見ましたが、あれはゲームチェンジの瞬間でしたね。和島さんの考えるNFTの概念とは?

和島:NFTの概念って人によって様々ですが、自分は商品化が一番シンプルだと思うんです。デジタル上のIP(知的財産)はアーカイブを含めて数え切れないほどありますが、こうした複数のIPをマッシュアップしてひとつにできるのが、NFTの最大の魅力だと思います。

鳩山:ゲームから来るキャラクターはNFTと相性が良いですが、ファッションはもう少し先の話になると思っていました。でも今年に入ってから、想像以上に早くファッションのNFTが出てきていますね。

和島:リテールがコロナの打撃をもろに受けていて、新しい次の芽に目が向いているからでしょうね。今はファーフェッチの立ち上げで「ECをやりましょう」と言っていた時の感覚と似ていますが、その時と違うのはマイナスの議題がほとんど出ないこと。皆さん前向きです。

鳩山:僕は「ブランコス・ブロック・パーティー」を展開するミシカル・ゲームズ(4)というゲーム会社の支援を2年前からしているのですが、先日バーバリーと共同でNFTを発売したんです。限定750体の「SHRAKY B.」という約300ドルのアバターが、発売して30秒で売り切れるのを目の当たりにして、来年は凄いことになりそうだと。

和島:グッチやバレンシアガもデジタルフォーメーションが早いですよね。オフ– ホワイトがLVMH傘下に入りましたが、ヴァージルが新しく作るのはデジタルファッションのブランドだとにらんでいます。

鳩山:バーチャルブランドになった時に、デザイナーには何が求められるのでしょうか?

和島:おそらく現実の商品をCG化しても、新しさを感じないと思うんです。ゲームはテクノロジーを誇張したり未来っぽい演出をしたりするので、ゲーム的な要素とファッションの融合がキーになってくると思います。引力に関係ない広がり方をする服とか、服の周りに何かが浮いているとか、オートクチュール的なデジタルでしか表現できないものを見てみたいですね。

鳩山:日本のデザイナーはデジタル時代に活躍できるのでしょうか?

和島:日本には引き出しを持っているデザイナーがたくさんいます。ナイキのコラボを見ても日本のブランドが大半を占めている状況で、今の日本は80年代のパリに近い黄金期だと思っているんです。裏原の流れを汲むデザイナーはもちろん、レディメイドの細川さん、ダブレットの井野さんらは世界規模で影響力を持っています。アートや音楽との結びつきも強く、コンテンツ化をしやすい状況にあります。

鳩山:NFTが成功する確率は見えている感じですか?

和島:NFTは新しい仮想通貨でもあり概念でもあります。でも仮想通貨だけではブレイクスルーしないので、コンシューマーが欲しくなるものが必要です。今はクリエイターとゲーム業界が一緒に船を出して出発しているところで、既にマーケットはできています。商品やクリエイティビティの革新が出てこれば、成功する確率は高いと思っています。

鳩山:前向きで素晴らしいですね!最後にセンスの読者へのメッセージをお願いします。

和島:47歳にもなるとファッションの感覚も遅れてくるし、クラブで朝帰りするのもしんどくなります。でも好奇心は相変わらず持ち続けていて、常にチャレンジする場に自分を置くことを心掛けています。先輩に言われたのは、新しいチャレンジをしている時がその人を輝かせるということ。人生のピークはまだまだ先ですよ!

(1)NFT (エヌエフティー)
偽造不可な鑑定書、所有証明書付きのデジタルデータのこと。暗号資産(仮想通貨)と同じく、ブロックチェーン上で発行および取引される。

(2)Apex Legends(エーペックスレジェンズ)
エレクトロニック・アーツが配信するバトルロイヤルゲーム。基本プレイ形態は1チーム3人のスクワッド、1チーム2人のデュオからなり、計60人でのオンライン対戦が可能。2019年の配信開始から72時間でプレイヤー数が1000万人を超えたのは伝説。

(3)Metaverse(メタバース)
SF作家のニール・スティーヴンスンによる1992年の著作「スノウ・クラッシュ」の作中に登場するインターネット上の仮想世界のこと。現在は主に、インターネット環境が到達するであろう仮想空間サービスやコンセプトモデルの通称として用いられる。

((4)Mythical Games(ミシカル・ゲームズ)
アメリカ・ロサンゼルスを拠点とするNFTゲームのスタートアップ企業。ブロックチェーンゲームの「ブランコス・ブロック・パーティー」が世界中で話題を集めている。