愛してやまない特別なTシャツ 俺の一枚 落合宏理
photography by TOYOAKI MASUDA
text by DAISHI “DA” ATO
LABORATORY/BERBERJIN®の名物スタッフで、センスの公式YouTubeチャンネルでも人気のYUDAI。彼がTシャツに精通したゲストを迎え、“人生の一枚”を聞き出す本連載。第2回のゲストは、ファセッタズムのデザイナー、落合宏理氏。
Vol.2 Guest HIROMICHI OCHIAI
Guest 落合宏理
「ファセッタズム」デザイナー。12年に東京ファッション・ウィークでデビューを飾り、13年には毎日ファッション大賞において新人賞・資生堂奨励賞を受賞。15年からはコレクション発表の舞台を海外に移し、16年からパリで発表を続ける。
落合:このTHRASHER のTシャツはハタチぐらいの頃に原宿のスケートショップで買ったんだけど、当時、「渋谷にバリー・マッギーがいる」っていう噂を友達から聞いて、二人で探して見つけて、その場でこの“RIOT”っていうグラフィックを描いてもらったんだよね。
村越:見つけるってヤバいですね! これはその時に着てたTシャツってことですよね?
落合:着てた。普段から着てた物だったし、自分がカッコいいと思ったアーティストに描いてもらえたのがすごくうれしくて。今は服として着ることもあるけど、普段は家に飾ってる。
村越:最早アートピース的な感じですよね。
落合:このTシャツの色合いは自分がやってるFACETASM にも通ずるものがあると思う。あと、この“NICE CAMPER”っていうのは、まだ神南にあった頃のUPLINK までノイズのイベントを観に行った時に、プリンセス・ドラゴン・マムっていうわけ分かんないアメリカのノイズバンドに描いてもらったんだけど、彼らのライブで俺がすげえいいジャンプをしたみたいで(笑)。まあ、厳密に言うと描いたのはそのバンドのボーカルの彼女なんだけど。
村越:なんスか、それ! めちゃめちゃいいエピソードじゃないですか!(笑)
カルチャーが詰まった“世界に一枚”のTシャツ
原宿のスケートショップで買ったTHRASHERのTシャツ(購入時は新品だった)に、アメリカ出身のグラフィティアーティストTWISTことバリー・マッギーによるグラフィックや、プリンセス・ドラゴン・マムなどのバンドによるサインが描かれている。ストリート系のライターが多い中、モッズっぽいシルエットのズボンを履いているバリーがカッコ良かったと落合は語る。
落合:あと、日焼けしてほとんど消えちゃってるけど、昔ライブを観に行った他のバンドのサインも描いてあったり。
村越:落合さんって本当にこういうカルチャーが好きな方ですよね。
落合:昔からちゃんと現場に行こうとは思ってたね。
村越:それにしても、バリー・マッギーの手描きとは。
落合:手描きっていいよね。今となってはTシャツ以上の物になってるし、それって服というものの素晴らしい形のひとつだと思う。
村越:これってもともと古着だったんですか?
落合:いや、新品。まあ、ずっと飾ってるから日焼けもしちゃってるんだけどね。
村越:当時はなんでもなかったTHRASHER の現行が20年着続けることでここまでエイジングして、さらに落合さんが通ってきた様々なカルチャーが詰まっているという。ただ単にバリー・マッギーがサインしてくれたTシャツっていうだけではないし、これこそまさに“俺の一枚”って感じですね。
落合:リアルに現場にいたからこそ味わえたもので、自分にしかできなかったことだからね。