SENSE MAN vol.8 featuring 山田裕貴

photography by JUNJI HATA styling by RYO KURODA
hair & make-up by MAKOTO ( juice) text by SEIRA MAEHARA (インタビュー)

朝ドラでは全国的に愛される男を演じながら、時には奇人、狂人的な役も難なくこなすなど俳優として幅広い表情を魅せる山田裕貴さん。話題作にも続々と出演し続ける中、SENSE定番の黒を身に纏い、今回もまた新たな一面を表現する。

ジャケット¥457,600、シャツ¥78,100、リング¥121,000※参考価格・4つセット/以上ジバンシィ(ジバンシィ表参道店)

エッジーな印象もある山田氏。身に纏うは、新たなディレクターにマシュー・M・ウィリアムズを迎えたジバンシィのライダース。レザーはタフでワイルドという印象をスタイリッシュに昇華した好例と言える。ソリッドに仕上げながらも、男らしさも決して忘れない。

ジャケット¥99,000 、ブーツ¥162,800、ベルト¥37,400/以上ビズビム(ビズビム)、パンツ¥90,000、サングラス¥52,800、Tシャツ¥33,000/以上ビズビム(F.I.L. TOKYO)

普段は“黒”が多いと語る山田氏。時には、土クサさを感じさせつつ、微妙な風合いの違いで楽しむのも面白い。こちらのセットアップは武骨な印象を与えながらも、インナーをTシャツでハズすことで重くはならない。カッコいい男が持つ空気感を引き出してくれる。

ジャケット¥407,000、Tシャツ¥88,000、パンツ¥110,000※参考価格、ネックレス¥308,000、ブレスレット¥154,000、リング¥69,300、スニーカー¥148,500/以上ディオール(クリスチャン ディオール)

光沢感のある素材を採用したMA-1。まさにワンランク上のストリートスタイルと言える。パンツにはスラックス、存在感のあるジュエリーで大人の男らしさを表現する。それでも、Tシャツに描かれるケニー・シャーフのグラフィックによって、いい意味での抜け感が。

ジャケット¥523,600、Tシャツ¥42,900、パンツ¥106,700、ネックレス¥110,000、スニーカー¥96,800/以上アレキサンダー・マックイーン(アレキサンダー・マックイーン)

もはや貫禄すら感じさせるダブルのジャケット。しかも、レザー。決して年齢は関係なく、深みのある男だからこそ、似合う一着と言える。いかにも“男”といったジャケットだが、パンツの裾はリブ仕様、足元もスニーカーと、今っぽさを感じさせるスタイリングだ。

ライダース¥275,000/ショップ・コム デ ギャルソン、Tシャツ¥27,500、パンツ¥38,500/ともにコム デ ギャルソン・オム ドウ(以上コム デ ギャルソン)、ネックレス¥357,500/ミキモト(ミキモト カスタマーズ・サービスセンター)

トリを飾るのは、まさにSENSEと言えるライダース。どんなウエアを着ても負けないくらい鋭い眼差しの山田氏。今回は敢えてダブルを合わせるのではなく、シングルを採用。スタイリッシュな印象にとどまらず、肩や肘に施されたパデッドが男らしさを加速する。

SENSE MAN Interview with 山田裕貴

僕も魂から変われと思いながらやってます。
僕は消えていい、みたいな。

山田 : 撮影中にお伝えできなかったんですけど、ファッションを勉強したくて『SENSE』読んでました! だから今日はめちゃくちゃテンション上がりました。

中里 : ええ! ありがとうございます! 洋服はお好きですか?

山田 : 違う気分になれるので好きです。演じる時も衣装を着るとスイッチが入るというか、毎回違う感覚をもたらしてくれるので。

中里 : 今回、特に好きだったコーデはありますか?

山田 : デ・ニーロにダブるとおっしゃってくれたスタイリングですかね。にやにやしちゃいました。でも全部欲しいくらいです。

中里 : どれもお似合いでした! 『SENSE』は黒が多い雑誌なんですけど、黒もお好きとか。

山田 : 普段からめちゃくちゃ黒が多いです。友達にも、もっと色を使ったら?と買い物に連れて行かれるくらい。でも正直、真っ黒でスッとしてるか、柄々の派手派手かのどちらかが好きで。

中里 : まさに『SENSE』じゃないですか!

山田 : そうなんです。周りにも俺に色を与えるな、やるならとことんやってくれと言いたい(笑)。

中里 : 画面越しではすごく明るい印象が強くて、そういう空気感をお持ちなのかなって思ってたんですけど、実際お会いすると常に考えていらっしゃるタイプですよね。

山田 : そうです(笑)。目がつり上がってるし、黙っていると怖い人に見られがちで、だから頑張って明るくしてたんですよね。無理はしてないですけど、でももう今年で31歳になるので、ずっと元気でいるのも辛くなってきたなと。今はすうっと落ち着いてるぐらいがちょうど良くて。年齢ってやっぱりありますよね。

中里 : 変わりますよね。バラエティ番組にも出られてるので、より明るい印象が強いというか。

山田 : バラエティだと少しでも楽しくて明るい方がいいだろうな、と思ってギアを上げて臨むので、ある程度そういうテンションになります。でも今日は『SENSE』なので。センスある感じに見せたいという想いが出ちゃってるのかもしれない(笑)。

中里 : 実は結構インドアですか?

山田 : めちゃくちゃインドアです。ただ、きちんと世の中や世界を見ないといけないなと感じて、趣味になったのが神社巡り。一歩外に出ると誰に見られてるか分からないから、仕事モード山田裕貴のスイッチが入っちゃうんですよね。最近はそれをなくそうと休日はスイッチを完全にオフにして、外に出てても自分でいられるように練習しています。

中里 : 周りの目がありますもんね。役者を志したきっかけは、テレビに出たいからだったとか?

山田 : そうですね。学生時代に野球をやってたんですけど、野球だと体格やセンスだったり。お、"センス"だったり。2回も言わんでいいですね(笑)。肉体的なパワーも関係するじゃないですか。もちろんそれだけじゃなくて思考力や努力も必要ですけど、自分は肉体的に限界があるなと中学生の時に思って。俳優は心の職業で、心にセンス、あ、センス!という概念はないなと。

中里 : これからずっと2度言わなきゃいけなくなりましたね(笑)。

山田 : 大変だ(笑)。肉体的に力がないから、というように心のせいにすることがないなら頑張れるな、やりたいなと思ったんです。

中里 : 役者さんをはじめ、お笑いや歌手、モデルなどの芸能は、そこまで肉体的なパワーとは関係ない職業ですもんね。

山田 : そうなんですよね。ただ、例えばモデルならそれなりのスタイルや身長がないといけない。僕も180㎝を超えてるワケではないのでモデルは無理かな。歌も特別上手いワケじゃないし、お笑い芸人になれるほど面白いワケでも……と考えていく中で、僕は最終的に俳優を志して上京しました。

中里 : 役者が一番しっくり来ます。

山田 : 向いてますかね?

中里 : 向いてますよ! ただ、いろんな作品を拝見する度に、スポーツ選手としても活躍されたんだろうなって外野としては思います。

山田 : アクションものも多いですからね。それは体を動かしてきた過去が役立ってるなと。

中里 : 『あゝ、荒野』が大好きです。

山田 : ボクシングの! 本当にやったんですよ、週5ぐらいを2、3カ月。プロテスト受ければ? と言われるくらい入り込んじゃって。

中里 : ボクサー役の時はやっぱりボクサーを参考にされるんですか?

山田 : あれは間柴なんです。フリッカー(ボクシングのスタイル)を使うキャラにしようって。「菅田君が演じる主人公はインファイトで突っ込んでいく系のボクサーにしたいから、山田君はアウトボクシング系のキャラでいきたい」という話になり、アウトボクシングは『はじめの一歩』だったら宮田か間柴。それなら間柴の方が面白いかも、と提案させていただいて。

中里 : フォームが綺麗で感動しました。ヤン・イクチュンさん(韓国出身の俳優)の馬力もすごかったですよね。

山田 : 内圧が大きいというか、目だけで思いが乗ってる。心で思ってることが、耐えてるけど漏れ出してる、そういう表現がすごく好きです。思いの強さってなかなか難しくて。お芝居なので、本当に思ってることじゃないけど、本当に思ってないといけない。本当に経験してきたワケではないけど、本当に経験してきた人がそこにいないといけない。だから僕も魂から変われ、と思いながらやってます。僕は消えていい、みたいな。

中里 : 複数の作品を同時にやってると本当に自分が消えちゃいそう。

山田 : 消えてますよ。何のためにやってるんだっけ、という境地までいったこともあります。

中里 : それでもやっていける軸だったり、励みにしているものは?

山田 : あの映画、あの役良かったよ、とか山田裕貴が出てるなら見よう、みたいな周りの声です。見てもらえるからやってる。見てもらえない時期もすごくあって。

中里 : 『ゴーカイジャー』は割と早い方でしたよね。

山田 : 下積みとしては早い方で、本当に運が良かっただけです。高校卒業と同時に2年ほどお芝居の学校に通っていて、事務所と戦隊のオーディションを同時に受けていました。そしたら戦隊のオーディションに先に受かり、事務所にも所属するようになり、とぽんぽん決まっていったというか。その前は、養成所の学生みたいな立場で「この現場、行きますか?」と聞かれて行く。そこで映るか映らないかという所を歩いたり、バイトしたり……という日々でした。

中里 : そうだったんですね。バイトは何をやられてたんですか?

山田 : 牛丼屋とか新宿の少し高めな居酒屋でした。バイトでお世話になった先輩や仲間は今もすごく仲良くて、ずっと応援もしてくれています。その方達にも言ってるのでぶっちゃけると、実はバイト大っ嫌いだったんですよね。同じ時間に行って、繰り返し同じ作業をすることが苦手でした。

中里 : 刺激的な毎日を過ごしていたい派ですか?

山田 : はい、多分。居酒屋で働いてる時から、一言書けるネームプレートに「俳優王に俺はなる」と書いていました。完全に『ONE PIECE』の受け売り(笑)。でも、何回カシオレ(カシスオレンジ)作るの? そんなに飲むの? と嫌になってました。

中里 : カシオレ王になってた感じですね(笑)。毎日違うことをやろうと思ったら、ものを作る人になる以外方法はないですもんね。

山田 : そうですね。俳優をやっていたら毎日違うことができる。俳優業だけじゃなく、こうしていい服を着て雑誌に出させてもらったり、バラエティーの現場に行けば芸人さん達にお会いできて、笑かしてもらったり。刺激が欲しいワケではないんですよ、きっと。当時のバイトも生活のために必要なことだったと思う。でも新しいことをやって、新しい刺激をもらって変化していかないといけないなと常々感じているというか。知識もそう。例えば写真だと、この角度だからこう写ったんだ、とその一つひとつの動きさえも勉強になる。チャレンジして動いてみないと分からないですからね。

中里 : 今回も、手の動きで試行錯誤がありましたもんね。

山田 : そこに自分の好きな要素をプラスするというか、遊び半分でコナン君のポーズを入れてみよう。デ・ニーロに見える、ならデ・ニーロっぽい顔って何だろうと撮りながら考えたり。あとは、どうしたら服がカッコ良く見えるかと。

中里 : 山田さんは頭がいいってことですよね。

山田 : そうなんです。頭のセンスがいいんです。センスが(笑)。

中里 : (笑)。芸人さんへのリスペクトもすごいですよね。

山田 : お笑いは大好きです。笑顔が生まれるって一番最高の瞬間。どんだけ辛くて嫌なことがあっても、笑えてたら気分が戻ってくる気がする。だから、お笑いを生む職業はすごいなと。芸人さん方はそれを言ってくれるな、ダメダメだったやつが集まる所だぞ、みたいなことを言いますけど。でも、それはダメな自分をも認めているということ。もちろん全員がそうとか、ダメだという話ではなくて。長い下積みも経験して、人の痛みを知ってる人や優しい人が多いだろうなと思います。そういう人間性も含めて好きです。

中里 : いいですよね。レベルは全然違いますけど、実は僕も野球をやってて、その後バレーボールもかじってたんですよ。

山田 : 一緒じゃないですか!

中里 : 野球をやめた時は、挫折感とかもあったりしましたか?

山田 : 硬式野球のクラブチームに所属していたけど、プロ野球選手にはなれない。ならなかったら意味がないなと思って。父親がプロ野球の道を進んでるので、プロになれなかったら別に父親を超えることもないし、むしろそのために野球をやってたので。大人になってから気付きましたけど、父親を追い掛けてただけで、自分の人生を歩んでなかったんですよね。なので、野球は無理だって自分で蓋をしてしまった感じです。無理かどうかは分からないのに。

中里 : なるほど。でも、その後にバレーボールを選んだきっかけは?

山田 : バレーボールは、今も仲がいいレンという友達がしつこく声をかけてきて(笑)。あと父親が、帰宅部だけは許さない、そのまま家に帰ってきたら、腕の1本や2本折ってやるくらいの感じで。

中里 : 強いですもんね……。

山田 : そうなんですよ。高校時代に、遊びで1回腹の殴り合い勝負みたいなことを親父としたんですけど、軽くボンッてやられたのが思いっきり入って。それが怖くて、また重いパンチを食らわないためにも部活をやってたというか。

中里 : プロ野球選手のパンチすごそう……。会うまで、嫌な印象を持たれてたことはありますか? 役者さんとしてはいいことだと思うんですけど、嫌な役も多かったじゃないですか。『あゝ、荒野』でもいい役だけど因縁があったり。

山田 : 確かに、いい意味ですごく嫌な立ち回りにいる役が多いです。例えば、悪い役から僕のことを知ってくださった方は、僕のことを怖いと思ってて。逆に、バラエティーなどを見て知ってくださった方は、明るく熱血で真面目と感じているのかも。関わらないと本当の自分はなかなか分かってもらえないですよね。そういうイメージで悩むこともあります。"明るくて真面目"な印象のスタンスでこられると、そういないといけなくなるので少し疲れちゃう(笑)。周りに気を使って喋っていたら偽りの自分が進んでいくというか。素で自分らしく喋れる人は羨ましいなと思います。今まで僕はすごく周りに合わせて生きてきたんだなと、30歳を越えて気付きました。合わせるのはやめよう。しんどかったら、しんどいですと言おうと。

中里 : そうじゃないと、何事も続けられないですもんね。

山田 : 普段がうわべでいたら、芝居もうわべっぽくなってしまう。普段からマジで思ったことを伝えていけば、良いも悪いもお芝居の嘘がなくなってくるだろうなと。

中里 : 心の仕事ですもんね!

山田 : はい。そこはきちんとリンクしているハズで、滲み出てくるものなのかなと。もう、俳優人生も10年経ちましたし。

中里 : 10年経って一番変わったのは、"自分を出すようになった"ことですか?

山田 : まさにそうです。これからは、俳優でもあるけれど一人の人間なので、自分をちゃんと守りたい。今までは自己犠牲の上にあったけど、きちんと自分の思いを言っていかないとな、と。俳優仲間にも「仕事してる姿しか見てないよ。頑張りすぎじゃない? もう少し自分の幸せも考えた方がいいと思う」と心配されました。福士蒼汰もそんなこと言うんですよ。

中里 : 優しいですね。『ストロボ・エッジ』でご共演されてましたよね。ずっと仲いいんですか?

山田 : はい。架純ちゃんも心配してくれて。吉沢亮とも関係は長くて、どちらかというと亮とはしっぽりお酒を飲んだり。よく連絡をくれるのは大体そのメンツですね。本当に人に恵まれてます。

中里 : 吉沢さんとも共演されている『東京リベンジャーズ』も楽しみですし、2022年公開予定の『ハザードランプ』も、僕の仲間内で『なつぞら』の親子が再共演されると話題です。

山田 : その時期がまさにハードでした。撮影はすごく充実してましたし、ヤスケンさん(安田顕さん)がいてくれたからこそできた。毎回、台本を超えるような瞬間がその場で生まれて、そういうヤスケンさんとのお芝居のセッションが楽しくて楽しくて。撮影後に「僕にはもっと大きな舞台でお芝居をしてる山田君が見えていました。10年後も一緒にやりたいです」という素敵なメッセージもくださって。ものすごく嬉しかったです。『なつぞら』でご一緒した時も本当のお父さんと接してるかのようで。いい意味で接しづらかったんですよ、父と子の関係みたいな。

中里 : そうだったんですね。

山田 : でも、『ハザードランプ』の時はまた違った感覚がありました。僕が台本にないことをやったり、書かれてる以上のパートを続きでやったりすると、返してくれて。そこでまた熱いものが生まれてくる、あんな楽しいことはないです。今までは、大体こうなるからここはこうしよう、と流れは計算して決めていました。もちろん、全力でやりますけど。でも『ハザードランプ』の場合は全く決めていなくて。やってみた時にどうなるだろう、みたいなチャレンジングな自分もいたので。

中里 : 本当に公開が楽しみです!10年の節目でちょうどご一緒して、また20年の節目でも。

山田 : ご一緒したいですね。めちゃくちゃ嬉しかったな、あのメッセージ。本当に頑張ろうと思いました。

中里 : そういうタイミングや言葉って必要だし大切ですよね。また『SENSE』にも出てください。

山田 : また絶対に呼んでください!